2007年10月18日木曜日

にぎわい呼ぶ大衆芸能

空き店舗に劇場や寄席 低料金で気軽に

(2006年06月08日 読売新聞)

 大衆演劇や落語など、庶民的な芸能の拠点がここ数年、全国で相次いで誕生している。高齢化や落語ブームなどで魅力が再認識されたためだ。商店街の空き店舗などを活用した低コスト運営も特徴で、地域活性化の起爆剤にとの期待が高まっている。


平日でも多くの観客でにぎわう大衆演劇場「弁天座」(奈良県大和高田市で)

 昨年4月、奈良県大和高田市の近鉄高田駅前商店街にオープンした大衆演劇場「弁天座」は、大人1500円、中学生以下800円という手ごろな料金もあり、1年余りで入場客数が6万人超という盛況ぶりだ。約130席は、土日には予約だけで満席となる。

 元々は映画館だったが、客足が遠ざかり、2004年夏に閉館した。運営会社の宮崎昌明社長(59)は、曽祖父がかつて芝居小屋を経営していたことにちなみ、改装して劇場にしたという。

 演目は股旅(またたび)ものの踊り、女装した役者の日本舞踊など、幅広い。宮崎社長は「映画館は平日、観客10人未満が珍しくなかった。大衆演劇は熱心なファンが本当に多い」と驚く。商店街の人通りも増えたそうだ。

 高松市でも昨年12月、大衆演劇の役者だった夫妻が、パチンコの空き店舗に「大衆劇場仏生山」を開いた。入場客は多い日で1日に約200人という。

 落語を通じて、にぎわいの創出を目指す取り組みもある。大阪市天王寺区の鶴橋駅前商店街に03年3月オープンした「雀(すずめ)のおやど」では、 定期的に落語会が開かれている。倉庫2階の大広間(約50平方メートル)が会場で、若手落語家の勉強会などにも貸し出している。

 一帯の土地を所有していた不動産会社の倒産に伴い、土地を買い取るため地元が設立した受け皿会社が、「雀のおやど」のオーナーだ。牟禮(むれ)秀 信支配人は「単発の販促イベントで一時的に商店街の売り上げを増やすより、訪れた人に街の魅力を感じてもらう効果を狙った」という。落語に目を付けたの は、同じ演目でも毎回、客を笑わせる不思議な魅力があるからだ。

 奈良市の旧市街地「奈良町」では昨年11月、六つの寄席を同じ日に開催する「落語ふぇすてぃばる」が初めて開かれた。7、8年前から、寺院などを会場にした定期寄席が徐々に増えており、町おこしのため一斉に開くことにした。今後も毎年開催する予定だ。

 大阪府池田市では来年4月、「落語ミュージアム」が開設される。落語に関する書籍やDVDの展示のほか、寄席のスペースも設ける。大阪市でも今年9月、常設寄席「天満天神繁昌亭」がオープンする。

 日本芸術文化振興会の上杉幸雄・国立演芸場部長は「能など古典芸能と比べて敷居が低く、低料金でだれでも気軽に楽しめるのが大衆芸能の魅力。団塊世代の大量退職で、今後はファンの増加が見込める」とみている。