2009年8月16日日曜日

「ものがたり観光」で、シンポ

09/07/14

大阪府河内長野市の大阪千代田短期大学物語観光情報研究センター(李有師所長=同短大准教授)は6月27日、「ものがたり観光シンポジウム」を開いた。住民同士あるいは住民と観光客がコミュニケーションを高めることができる物語の力を地域活性化に生かそうと企画した。

基調講演は「観光を核にしたニッポンの地域再生」と題し、北海道大学観光学高等研究センター長の石森秀三さんが話した。石森さんは、視覚重視の「観光」から五感重視の「感幸」や交流重視の「歓交」へとツーリズムでイノベーションが始まっているとし、ライフスタイルも同様に革新が必要だと指摘。米国ではステイケーションという現象が生じ、在宅しながら休暇する日常の中の観光が見直されていることを紹介した。

その中で「地域を疲れさせる町おこしから、地域を元気づけるものがたりづくりへ変えましょう。ものがたりは、皆さんの地域に対する誇りや愛情が源泉です。地域の宝、ものがたりを掘り起こす観光学習が、皆さんの暮らしを幸せなものにするのではないでしょうか」と呼びかけた。

観光庁観光地域振興部部長の大黒伊勢夫さんは、九州運輸局長時代に取り組んだ「九州物語委員会」について話した。「物語は観光資源をつなぎ、その価値を高めてくれます。例えば、長崎や島原の教会群にはザビエルに始まり、島原の乱などが背景として連なる物語があります。まさに、物語の力は地域の力です」。「地域の物語が小説や映画になり、情報発信力を持つようになります。九州は、中国で人気のある俳優、高倉健さんのふるさととして中国へPRしています」などと述べ、「そこに、旅人が作る物語も入っていくのだと思います」とした。

佛教大学教授の高田公理さんは「旅はものがたりを生み出します。旅を計画する時、実際に行った時、そして帰ってきてから自慢話。それで俳句や短歌、紀行文を書いたりする。山形の立石寺は『静けさや...』と詠んだ瞬間に名所旧跡です。これは芭蕉でなくても誰でも可能性があります」。

国際日本文化研究センター教授の白幡洋三郎さんはシンガポールのマーライオン、コペンハーゲンの人魚姫像、ブリュッセルの小便小僧を"世界三大ばかばかしい観光名所"として「でも、世界中から人が来る。何かものがたりが隠されているんですね。僕の場合、小便小僧のそばの角にいい喫茶店を見つけた。それが僕にとってのものがたり観光です」と話し、「がっかりできる謎を探るのも面白い。ものがたり観光は重層的なことを可能にするのではないでしょうか」。

今後、白幡さんを会長に「ものがたり観光行動学会」の設立を予定している。