2010年10月3日日曜日

APEC観光大臣会合、「奈良宣言」を採択

10月2日 観光経済新聞を抜粋編集

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)の観光大臣会合が9月22、23日、奈良市で開かれた。日本を議長国として観光協力について協議し、共同宣言「奈良宣言」を採択した。宣言では、観光を経済成長の「エンジン」と認識して持続可能な発展に協力を強化していくことを確認。

 開催国として馬淵澄夫国土交通相が議長を務めた。閣僚級の参加は日本のほか、インドネシア、韓国、マレーシア、メキシコ、パプアニューギニア、フィリピン、台湾、タイの8つの国・地域。

 奈良宣言では、「雇用創出、貧困縮減、環境保全を含む観光の経済的重要性を認識し、観光大臣会合のテーマ『アジア太平洋地域における新たな成長戦略としての観光』を支持する」と表明。首脳会合での宣言に「経済的成長への観光の重要な貢献に関する言及を盛り込む」ように努力することを確認した。

 観光がアジア太平洋地域の経済をけん引し、持続的な発展を遂げるための行動計画として「APEC観光戦略プラン」を策定することでも合意した。来年4月、フィリピンで開かれる作業部会での採択を目指す。

 観光振興に向けた協力の方向性には、(1)ビジネス環境の整備(2)国際比較が可能な観光統計「観光サテライト勘定(TSA)」の整備(3)観光需要の平準化(4)インバウンド観光の振興(5)他分野との融合による新たな観光への取り組み──などを盛り込んだ。

 観光需要の平準化では、特定の季節や地域に対する需要の過度な集中を緩和することが、雇用の安定、自然や文化などの観光資源への負荷を抑えることにつながり、観光の持続的な発展に必要だと指摘。インバウンド観光に加え、他分野と融合した医療観光やエコツーリズムなどの新たな観光の振興に向けても、情報や優良事例の共有、参加国の官民の連携促進などを重要視した。

 議事終了後の共同記者会見で、馬淵国交相は議長報告として「新たな成長戦略のエンジンとしての観光の位置づけを確認したほか、地域連携をはじめ未来に向けた観光施策に関する十分な議論を行うことができた」と成果を強調した。

■APEC
 日本開催は1995年の大阪以来で15年ぶり。2000年から設置された観光大臣会合は2年ごとに開かれ、日本での開催は今回が初めて。参加国・地域はオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、台湾、タイ、米国、ベトナム。